アジア太平洋経済協力会議(APEC)の議論の焦点について、元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所の田中均理事長に聞いた。
--保護主義の動きが広がっている。APECに期待することは
「世界に一種の暗雲が広がっており、APECは強く反応すべきだ。多国間の会議や2国間会談を通じ、自由貿易の推進、地球温暖化問題への対応、核不拡散といった問題の重要性を確認し、トランプ次期米政権が誕生しても、これまでの世界の流れを逆行させないという強いメッセージを打ち出すべきだ」
--環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)も危機にひんしている
「米大統領選でトランプ氏が勝った要因の一つは、格差や移民問題で『もうたくさん』という意識が広がっていることだ。自由貿易を進める背景には、短期的に犠牲を払ってでも、外国より競争力のない産業を競争力のある部門に移し、長期的に経済規模を拡大させようという考え方があるが、今回の米大統領選では逆の主張が受け入れられた。TPPが発効する見通しはない。TPPに代わる枠組みをどうするか考えていく必要がある」
--安倍晋三首相がトランプ氏と会談する
「今回の米政権交代は従来と違うという意識が日本政府には必要だ。トランプ氏と首相の会談は極めて望ましいが、今後もさまざまなレベルで対話を重ねるべきだ。孤立主義的な米国は世界にとって望ましくない。最も大事なのは、国際社会で米国のリーダーシップを期待すると伝え、日本が支えていくという原則で合意することだ。対中国、対ロシアの政策もしっかり協議し方向性を合わせていく必要がある」