「ゲームチェンジャー」トランプ次期米大統領の登場で、ドル高と米長期金利の上昇が目立っている。この現象は一過性ではなく、米国へのマネー流入は当面、継続する可能性がある。今までは想定すらしていなかった「行き過ぎた円安」を日本政府が懸念するケースが将来的にないとも限らない。
トランプ氏が勝利宣言した9日夕(東京時間)の直後から始まったいわゆる「トランプ相場」。東京市場では「一時的」との見方が多かったが、ドル指数は100を突破し、13年ぶりの高水準となっている。
最大の要因は、トランプ氏の経済政策。ほぼ完全雇用状態の米国で、年間に1兆ドル単位の財政出動を展開し、米経済を刺激し、米国内の雇用を増加させようとすれば、名目国内総生産(GDP)は押し上げられ、期待インフレ率と物価が上昇。世界中からマネーが米国に流入して、米株価も上昇する-というシナリオだ。
他方、新興国からマネーが流出し、通貨安と株安がもたらされる。トランプ氏勝利の前なら、新興国の市場不安定化が「リスクオフ」要因とみなされ、それが日本や欧州だけでなく、米国市場にも波及し、米株下落要因になった。ところが、現在のマネーは「一方向」に米国へと向かい、米市場が動揺する兆しは見えない。
マネーの世界では「ゲームチェンジ」が行われた可能性がある。このマネーフローは、トランプ次期大統領が「ドル高は、米国の利益でない」と宣言するまで継続すると予想する。トランプ氏の経済政策・トランポノミクスの全容は依然として明らかでないが、大幅な財政出動が基本であるなら、弱点は米国内での金利上昇と物価上昇だ。