高速増殖炉の現状 撤退か模索か、世界は二極化 (1/2ページ)

 政府は19日の方針案で高速炉開発を今後も継続する考えを明示したが、世界で開発された高速炉の一部は事故を起こし、長期停止の後に廃炉となるもんじゅと同じ道筋をたどった。研究開発は困難が山積し、撤退する国と国際協力などにより商用炉への道を模索する国に二極化している。

 世界で最初に高速炉に取り組んだのは米国だ。1940年代前半から実験炉の建設と運転を続けてきた。しかし、相次ぐ事故や核不拡散政策の変更で77年に原型炉の建設を無期延期し、現在は研究開発にとどまる。イギリスやドイツも高速炉の計画を中止している。

 一方、世界の高速炉開発をリードするのは、フランス、ロシアという2つの原子力大国だ。原子力を基幹エネルギーに据えるフランスは高速炉も重要な輸出産業と位置づけている。日本と共同開発するアストリッドは工業的実証を目的として2030年代の運転開始を計画している。また、最も開発が進んでいるのがロシアで、14年に初臨界した実証炉「BN-800」は既に商業運転に移行した。

 こうした大国の技術を導入し、中国とインドなどの原子力新興国が猛追する。ロシアの技術を使い10年に実験炉を初臨界させた中国は、もんじゅと同じ段階の原型炉を飛ばし、20年代半ばの実証炉導入を目指す。

 インドはフランスから実験炉を導入し、20年代の実用化を目指す。韓国も研究開発を進めており、米仏露印との2国間協力を実施し、28年の原型炉建設完了を計画している。