みずほ総合研究所チーフエコノミストの高田創氏
今年度の半ばから財政拡大による景気対策に手を打ってきたが、今回の予算もその延長線上にある。今年は中央銀行による金融緩和政策の限界が世界的に顕現化した大きな節目の年となった。米国のトランプ新政権や中国、欧州の一部などでも景気の下支え策として、政府の財政政策をもっと活用していこうという流れが強まっている。
財政健全化への目配りも重要だ。給付型奨学金の創設など1億総活躍社会に向けた取り組みを充実させつつ、高齢者の医療分野での負担増などで社会保障費を削減するなど、歳出にメリハリの利かせた点は評価できる。だが、社会保障費の抑制にはもう一段の対応の余地があり、高齢者向けの医療・介護分野などで切り込むべきだった。
財政拡大で景気を支えながら、民間企業の活力の呼び水になるような構造改革を進め、持続的な成長につなげる必要がある。ビッグデータや人工知能(AI)といった将来の成長分野で企業の投資をインセンティブで促す流れをつけることが急務になる。