エネルギー・ブリッジはプーチン大統領が「サポートする」と明言しており、本来なら大統領案件として実現してもおかしくない。
ただ、サハリンから北海道に送電線を引いても、本州と結ぶ「北本連系設備」では60万キロワットまでしか電気を送れない。発電コストが安い極東の電気を首都圏の大消費地に送ることができて初めて多額の投資コストの回収が可能になるため、現状では宝の持ち腐れだ。
一方、日露協議と並行して議論が進んだ東京電力ホールディングスの経営改革では、他の電力大手と送配電事業の再編や統合を進める方針が打ち出された。実質国有化が続く東電が東日本の送配電網を一括制御できるようになれば、サハリンから東京まで一気に電気を送る構想の現実味が増す。
とはいえ、いずれにしても北方領土交渉が前進しないままでは、多額の投資に対する国民の理解は得られない。「『食い逃げ』といわれないよう、経済協力もあまり派手にできない」(政府筋)のが現状だ。
北方領土が返還される日を夢見て、大型プロジェクトは再び長い眠りに入る。(田辺裕晶)