【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(40) (3/3ページ)

2017.2.10 05:00

水路から水田に水をくみあげるポンプ。漏れ出た水で、水路わきの道路が浸食されている=2017年2月、カンボジア・ポーサット(プルサット)州(筆者撮影)
水路から水田に水をくみあげるポンプ。漏れ出た水で、水路わきの道路が浸食されている=2017年2月、カンボジア・ポーサット(プルサット)州(筆者撮影)【拡大】

 ◆強制的な協同労働

 カンボジアでは、ポル・ポトのクメール・ルージュの支配下(1975~78年)での、強制的な協同労働によって、百万人を超える犠牲者を出しながら、人力のみで総延長が1万5000キロ、地球の円周の3分の1にもなる水路が、わずか3年8カ月で掘削された。このポル・ポト水路は方形の美しいものであるが、重力を無視して掘られたものが多く、欧米の技術者からは、全く役に立たないばかりではなく、自然環境に対して有害なものさえあると非難されてきた。

 この水路の一部でも、改修し管理して利用しようとするプロジェクトが、カンボジア当局と日本の協力によって進められている。日本人専門家の話によると、ポル・ポト水路は水田より水位が低いので、重力灌漑ができないという。この点は日本やミャンマーとは大きく異なる。

 だが、今はポンプという近代技術がある。私が実際に見た農民たちは、低い位置にある灌漑水路だけでなく、排水路からもタイ製のエンジンとポンプで水田に水を入れて乾期水稲作を行っていた。これで水路わきの土手が壊れようがおかまいなしである。農民にとっては、そこに水がたまっていればよく、水路を共同管理して水を流すということには、ポル・ポト時代の強制協同労働の暗黒が影響していることもあろうが、ミャンマーよりもずっと関心が薄いようであった。

 日本人は稲作というと共同体を連想するが、ミャンマーやカンボジアでは稲作こそ日本より盛んであるが、そこに共同体は存在しない。水利組合の設立においては、共同体を前提としない水管理システムの構築が模索される必要がある。

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