ムニューシン米財務長官は23日、主要貿易相手国に対する為替操作国への認定は「従来と同じ手続きを踏んで実施する」と述べ、オバマ前政権が定めた判断基準を維持することを明らかにした。日本や中国は従来の基準では為替操作国に該当せず、財務省は4月に公表する外国為替報告書でも認定を見送る公算が大きい。
米CNBCテレビの取材に答えた。トランプ大統領は「日本と中国は輸出を増やすために通貨を切り下げている」と主張しているが、ムニューシン氏は厳格な基準に従って冷静に判断する意向を示した。CNBCもムニューシン氏の発言を受けて、米国にとって関心の高い中国は為替操作国には当たらないと報じた。
トランプ氏は選挙戦で「大統領就任の初日に中国を為替操作国に認定するよう財務長官に指示する」と公約していた。23日のロイター通信のインタビューでも、中国を為替操作の「チャンピオン」だと批判した。認定見送りを示唆するムニューシン氏の発言の背景には、前例踏襲で国際金融市場への影響を避け、日中と良好な関係を築く方が得策との判断があるとみられる。
財務省は、対米貿易黒字が巨額なことや自国通貨を安値に導く大規模な外貨買い介入をしていることなど3つの基準を満たす国を為替操作国に認定する。是正しない場合は対抗措置を取る。
判定結果は毎年4月と10月に議会に提出する外国為替報告書に明記。昨年10月の報告書は日本が2つ、中国は1つの基準に該当するとし、いずれも為替操作国の手前の「監視対象」に指定した。
日本は2011年11月を最後に為替介入していない。中国は人民元の価値下落をとめるための外貨売り介入を繰り返している。判定基準が変わらなければ4月の報告書でも為替操作国への認定は見送られる。(ワシントン 共同)