政府は13日に合意した協力策「日・サウジ・ビジョン2030」で、石油依存経済から脱却を目指すサウジの産業多角化を後押しする「水先案内人」を買って出た。最大級の原油輸出国であるサウジとの関係を深めるとともに、経済特区の創設などを通じて参入規制の緩和も促し、日本企業の中東市場開拓につなげる狙いだ。ただ、政府の手厚い保護を受けるサウジ人の“働き方改革”は難航が予想される。
「サウジとの関係を新しいレベルに引き上げ、改革を全力で支えたい」。経済産業省幹部は力を込める。
協力策では、サウジの脱石油依存と日本の成長戦略の相乗効果を生み出そうと、サウジ国内の産業競争力強化やインフラ整備、エネルギー分野の協力などを含めた重点9分野31件の官民先行プロジェクトを選定した。
財政収支の大半を石油関連事業に依存するサウジでは、国内の産業が育たず、査証(ビザ)の発給遅れやサウジ人の雇用義務付けといった複雑な規制が外国企業の参入を阻んでいる。このため協力策では両国の外務省が査証発給の円滑化を進めることに加え、規制緩和などで企業を誘致する特区の開設を明記した。
また、日本郵便とサウジ郵便公社(サウジポスト)が越境電子商取引(EC)システムを整備。経産省と東洋紡、JFEエンジニアリングなどがサウジ環境・水・農業省などと提携し、海水の淡水化事業を進めるなど具体策も盛り込んだ。