公示地価で首都圏住宅地の上昇が鮮明となり、マンション用地の確保すら難しくなる中、デベロッパーは地方の中核都市への進出を活発化している。供給戸数に占める地方の比率を高めることで、マンション事業全体の収益バランスを維持するのが狙いだ。
地方では、交通・商業利便性の高い場所に移り住みたいという傾向が強まっており、住宅や商業施設などの一体型開発が相次いでいる。例えば野村不動産が手がけ、今月完成した「プラウドタワー明石」(兵庫県明石市)は全199戸が即日完売した。この事例に象徴されるように“コンパクトシティ”に対する人気は根強く、地価の押し上げ要因となっている。
地方の主要都市でひときわ目立つのは、福岡市内のマンション価格の高騰だ。閑静な住宅地では、東京の人気住宅街に匹敵する価格で販売されるケースもみられるようになった。
しかし、東京に本社を置く投資用マンション事業会社の社長は、こうした動きに距離を置く。現地調査の結果、福岡にマンションを建てて現在の価格水準で投資家に販売した場合、投資家は入居者に敬遠される高価格の賃料を設定しなければ、一定の利回りを確保できないことが判明したからだ。
地方の事業環境も決して楽観はできないようだ。