【台北=田中靖人、北京=西見由章】中国国務院(政府)台湾事務弁公室の馬暁光報道官は29日、台湾の元民主進歩党職員で非政府組織(NGO)職員の李明哲氏(42)を国家安全危害容疑で拘束したことを明らかにした。中国の国家安全危害罪はスパイ行為のほか「国家分裂や国家統一の破壊」を画策する行為なども適用対象としているが、当局による摘発の実態や基準は不透明だ。今回の拘束は中台間の新たな火種となる可能性がある。
29日に台北市内で記者会見した妻らによると、李氏は台北市の地域社会教育団体の事務職員。民進党の立法委員(国会議員に相当)秘書などを経て約4年間、党職員を務めた。中国の人権状況に関心があり、SNSを通じて中国の友人に台湾の民主化の経験を伝えるなどしていた。3月19日に広東省に入った後、連絡が取れなくなった。高血圧の持病があるといい、妻や支援者は逮捕の具体的な容疑や拘束場所などの公開、李氏の即時釈放を要求した。
馬報道官は李氏の健康状態について「良好だ」とした上で、「大陸を訪れる台湾同胞の合法的な権益は保障されている。恣意的に身柄を拘束することはない」と主張した。