トランプ米大統領は28日、オバマ前政権時代に導入された地球温暖化対策に向けた規制を見直す大統領令に署名した。米国の温暖化対策の後退は必至で、パリ協定で目標とした二酸化炭素(CO2)排出量の削減も困難になる見通し。トランプ氏は署名に際し「米国の雇用を奪う規制をやめる歴史的な一歩だ」と訴えた。
見直しを指示した規制の中には火力発電所のCO2排出を抑える「クリーン・パワー・プラン」も含まれる。地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」で米国が示したCO2などの温室効果ガス削減目標を達成する中核的な政策で、大幅に見直せば実現が遠のくことになる。
CO2排出量が中国に次ぐ世界2位で、これまで世界の温暖化対策をリードしてきた米国の方針転換は、協定に参加する他国の意欲をそぐなど悪影響を及ぼすことが懸念される。ただし今回の大統領令はパリ協定の取り扱いに触れていない。政権内では協定からの離脱をめぐって主要メンバーの意見が割れているとされる。
大幅な見直しは環境団体による訴追に発展する可能性が高く、施策に反映させるまで曲折もあり得る。パリ協定で米国は国内の温室効果ガス排出量を2025年までに05年比で26~28%削減する目標を提出。クリーン・パワー・プランは火力発電所からのCO2排出量を30年までに05年比で32%削減するとしていた。
大統領令はこのほか、オバマ前政権が温暖化対策で凍結した国有地での石炭採掘の新規認可も認めた。国内で石油や天然ガスの探鉱や開発も促進するよう指示した。また、前政権下で推進された、炭素を排出することによって生じる社会的な費用・影響の計算もやめる。(ワシントン 共同)