【産業政策】インドネシア、たばこ生産増強か健康か 法案審議めぐり混乱

 インドネシアは、たばこ法案の議会審議をめぐり混乱が生じた。現地紙ジャカルタ・ポストによると、ジョコ・ウィドド大統領は、たばこ産業の振興を柱とする法案を3月14日に議会で審議しないといったんは決断したが、18日に一転して法案を議会で審議すると発表した。

 同法案は、2020年までにたばこの生産量を現在の約3倍となる5240億本に引き上げるとした政権の計画に基づく。英市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、インドネシアの15年のたばこ市場は2313兆ルピア(約19兆1979億円)で、生産では世界4位だった。

 一方で、インドネシア保健省は、国内のたばこに起因するとみられる死者数が年間20万人を超え、喫煙による経済損失が378兆ルピアに達すると試算し、法案に反対姿勢を示している。昨年も法案の審議が検討されたが、同省の反発で棚上げとなった経緯があり、政府内でも見解が分かれる。

 たばこ産業については、健康志向の高まりなどで世界的に逆風が強まっている。ジョコ政権もこの流れを受け、18歳以上の喫煙率を15年の7.2%から19年までに5.4%に引き下げることを数値目標として掲げた。

 ただ、同国には50万人のタバコ農家と、60万人のたばこ製造会社従業員がいるとされる。政府はこうした人々の生活保障を優先させるとの姿勢も示しており、矛盾を指摘する声もある。

 法案の審議開始を政権に提案した議会の法律制定評議会は、ジョコ大統領がたばこ法案の審議見送りを決断した後、審議しなければ政府が提案する他法案の審議も拒否すると強硬姿勢をみせた。法案の支持者でもあるルキタ貿易相は、同評議会の圧力で政府が決断を覆したとの見方を否定した半面、同協議会と政府との間で調整して解決策を探るべきだとの認識を示している。(シンガポール支局)