「感・勘・観」で地政学的リスク対処
株式市場から安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の霊験がうせた。アベノミクス相場の上昇を牽引(けんいん)した外国人投資家が日本株(現物)の売りに転じているからだ。外国人投資家は3月第5週まで7週連続で日本株を売り越し、2017年に入ってからの累計売越額は1兆円を超えた。前年の16年は累計で3兆6000億円余りを売り越した。外国人投資家の買いが入らないのでは、日経平均株価が2万円台回復を目前に、長く足踏みを続けているのも無理はない。
トランプ・ラリー相場の寿命も短かった。日経平均は米大統領選直後の1万6251円から、今年3月13日の1万9633円まで約4カ月で21%上昇した。それが、トランプ・リスクの露見で先週4月6日には、1万8500円台まで下げた。トランプ米大統領の選挙公約の柱の一つだったオバマケア(医療保険制度改革法)の改廃法案が撤回されたことがきっかけ。共和党内の強い抵抗に遭って、賛成票が足りなかったためだ。
市場はトランプ政権の政策実行力に疑問符を投げ掛けた。市場が期待していた法人税減税やインフラ投資の拡大策が停滞し、先延ばしになるのではとの警戒を強めた。
トランプ大統領は先週、中国の習近平国家主席との初の米中首脳会談に臨んだ。トランプ米大統領は首脳会談が開かれているさなか、シリアの軍事基地へのミサイル攻撃に踏み切った。必要あれば果断に武力も行使する強い意志を習国家主席に見せつけた。北朝鮮への警告が込められていたのは言うまでもない。米中首脳会談は表向き、友好関係を深めて終わったが、両国は似た者同士。ともに「自国第一」主義を譲らない。軍事を国力の源泉の一つと考える。似た者同士はいずれどこかの局面で激しく角逐するのが定めだ。