■大局を見渡し、局地戦で日本活性化
ようやく待望の春が訪れたが、混沌(こんとん)とした時代状況が気持ちを暗くする。爽やかに目覚めた土曜日(15日)の朝、「さて、本コラムでも書こうか」と机に向かうが、うららかな春の日差しが私を外へと誘い出す。満開の峠を越した桜吹雪の中、品の良い喫茶店で程よい濃さのコーヒーをすすりながら、ふと新聞を眺めてみると、気分が沈む記事の嵐で、途端にコーヒーが苦く感じる、といった具合だ。
まず、目に飛び込んだのは、千葉県松戸市の幼いベトナム人少女の命を奪った犯人逮捕の記事だ。容疑者は被害者が通う小学校の保護者会の会長で、子供を犯罪などから守る「通学路の見守り活動」に積極的に参加していた。松戸市長は「今は対策が思い浮かばない」と会見でうなだれたが、3人の子を持つ親として背筋が寒くなる。
厚生労働省は1月に外国人労働者の100万人突破を発表したが、特に前年比56.4%増の約17万人と、中国人に次いで2位となったのがベトナム人だ。入管法や技能実習法が昨年秋に改正されたが、ますます外国人労働者が必要な中、治安の良さが売りの日本でこの事件が発生したのは非常に深刻だ。中越紛争やベトナム戦争の歴史もあって中国人、米国人を嫌うベトナムには、相対的に親日家が多い。日越友好に水を差す点でも今回の事件は許しがたい。
外国人労働者の増加と表裏だが、総務省が、日本の総人口が6年連続で減少したことなどを内容とする人口推計(昨年10月時点)を発表したとの記事に、また気が重くなる。特に自然減は過去最多の約30万人で、減少幅は今後加速する可能性が高い。