メイ英首相が下院選(総選挙)を6月8日に前倒しして実施する方針を表明したことで、外国為替市場では英ポンドが急騰し、18日に一時1ポンド=1.29ドル台と約6カ月半ぶりの高値をつけた。支持率の高い与党の保守党が総選挙で勝利すればメイ首相の政権基盤が強化されるとの見方が背景にあるが、その場合でも欧州連合(EU)との離脱交渉を有利に進められる保証はなく、ポンド上昇の流れは続かないとの声もある。
18日は、メイ首相が記者会見すると伝わった直後は警戒感からポンドが下落したが、内容が総選挙前倒しと判明すると一転、ポンドが急上昇した。突如表明された総選挙前倒しは欧州政治の先行き不透明感につながるはずだが、なぜ急速にポンドが買われたのか。
直近の英世論調査では、保守党の支持率は最大野党の労働党を大きく上回っている。総選挙となれば、保守党が議席数を伸ばしてメイ首相の求心力が高まり、EUとの交渉でプラスに働くとの見方が広がった。また、最近は投資家の間でポンド売りの持ち高がかさんでおり、総選挙前倒しの表明でポンドが急速に買い戻されたとの指摘もある。
ただ、総選挙の結果、メイ首相が後顧の憂いを断ったとしても、「交渉相手のEU側が英国に譲歩する度合いの拡大につながるわけではない」(SMBC日興証券の丸山義正氏)との指摘は多い。足元のポンド上昇について、みずほ証券の鈴木健吾氏は「一過性の可能性が高い」と分析した。