日銀、景気判断9年ぶり「拡大」 輸出、生産が増加基調に

 日銀は27日に開いた金融政策決定会合で、国内景気の総括判断を従来の「緩やかな回復基調を続けている」から、「緩やかな拡大に転じつつある」に引き上げた。景気判断に「拡大」の表現が用いられるのは、リーマン・ショック前の2008年3月以来、約9年ぶり。

 景気判断を一歩進めた背景について、黒田東彦総裁は会合後の記者会見で「輸出、生産を起点とする前向きな循環が強まる中、労働需給は着実に引き締まり、経済活動の水準を表す需給ギャップのプラス基調が定着しつつある」と説明した。

 会合では「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」もまとめた。17年度の消費者物価指数の前年比上昇率は、1月時点の1.5%から1.4%に引き下げた。携帯電話の本体価格や通信料の値下げなどを反映した。

 ただ、物価上昇率2%の目標達成に向けた勢いは維持していると判断。現行の金融緩和策を据え置くと賛成多数で決めた。

 当面の金融政策運営は、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度とする緩和策を継続する。新たに示した19年度の物価上昇率は1.9%とし、物価上昇目標の達成時期は「18年度ごろ」との見方を据え置いた。

 一方、実質国内総生産(GDP)の成長率は17年度は1.6%、18年度は1.3%とそれぞれ上方修正した。19年度は東京五輪・パラリンピック関連の設備投資が減速する可能性や、消費税率10%への引き上げの影響を踏まえ0.7%に鈍化する見通しだ。

 足元では北朝鮮情勢の緊迫化など、地政学リスクが高まっている。黒田総裁は「常にいかなる事態にも対応できるように頭の体操をしている」と強調した。