【ソウル=桜井紀雄】長嶺安政駐韓日本大使は4日、韓国大統領代行の黄教安(ファン・ギョアン)首相とソウルで会談し、慰安婦問題をめぐる日韓合意の履行や、釜山の日本総領事館前などの慰安婦像の撤去を求める安倍晋三首相の意向を伝達した。長嶺氏は会談後、記者団に「安倍首相の気持ちをしっかり伝えた」と述べた。
韓国政府によると、会談で黄氏は「両国間に難しい問題があっても、韓日関係を発展させられるよう両国政府など全ての当事者がともに努力することを期待する」と語った。
日本政府は、ソウルの日本大使館前に加え、釜山にも像が設置されたことへの対抗措置として1月に長嶺氏らを一時帰国させ、4月に帰任させた。長嶺氏は黄氏に直接、合意の履行を求める方針を示していたことから、帰任の第一目標に達したことになる。
ただ、黄氏の代行の任期は9日の大統領選直後に新大統領が就任するまで数日しかなく、実効性は限られている。支持率で首位に立つ最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏ら大統領選の主要候補はそろって合意の見直しや破棄を主張しており、像の設置が常態化する見通しが高い。