異なる文書構成
役所では通常、特定の課題に対し、担当部局の権限でどのような政策を打ち出すかという順序で仕事が進んでいく。報告書は「社会にスコープを当て、議論を喚起するのが目的だった。構成も役所の文書と全く異なって力が入った」(宮下室長補佐)。
有識者からのヒアリングやメンバー同士や、菅原次官との議論など、費やした熱量がにじみ出る報告書は発表直後から、フェイスブックやツイッターなどのSNSなどを通じて瞬く間に広がった。「霞が関にも人間がいた」「こんな官僚がいたなんて」と、従来の官僚とは違う好印象を持ったというものから、「今年は『官僚たちの夏』がやってくる」と国益のために通商政策の立案に奔走する姿を描いた城山三郎氏(1927~2007年)の小説に重ね合わせる声もあった。今では、民間企業やNPO、大学などから講演依頼が殺到しており、出版の予定もあるという。
一方で「そんな前提は、周知されてるのだから、新産業の創出とか、そういった可能性に満ちた明るい展望も出してくれよ」「ヤバイならなんとかしろよ。計算得意だろ経産省なんだから」などと、リポートの問題点を指摘する意見も続出し、炎上状態にも陥った。
少子高齢化や、高齢者重視の「シルバー民主主義」による社会の歪みや制度疲労は、これまで官僚たちが解決できなかった問題であったからだ。