国内の酪農家からは、牛乳価格が下落するという懸念の声がある(ブルームバーグ)【拡大】
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)では、欧州産のチーズに対し低関税の輸入枠を新設する。EUが最後まで求めたチーズ関税の完全撤廃は免れたものの、欧州産チーズという“黒船”到来で酪農家が打撃を受けるのは避けられない。チーズの国内シェアを奪われることで生乳が余り、牛乳価格の下落につながる懸念も指摘される。
EUは世界のチーズ生産量の約5割を占める最大の生産地だ。日本では現在、ナチュラルチーズに最大29・8%の関税を課しているが、発効後は輸入枠分の数万トンが低関税で流入する。
生乳段階からチーズ向けに生産するなど品質やブランド力が高い“本場もの”だけに、北海道の生産者は「市場を占領され、国産の需要が失われてしまうのではないか」と懸念する。
EUが日本市場に熱い視線を送るのは主な輸出先であるロシアとの関係がウクライナ問題で悪化したためだ。ロシアがEU産チーズの禁輸措置を取った2014年以降は供給力がだぶつき、価格下落に見舞われた。