【ソウル=桜井紀雄】米政府が米韓自由貿易協定(FTA)再交渉を正式に要求したことに対し、韓国の文(ムン)在寅(ジェイン)政権は、再交渉自体を何とかかわしたい構えだ。だが、トランプ米大統領は再交渉に強い意欲を示しており、米国ペースで協議に持ち込まれる可能性が高く、文政権は守勢を強いられている。
韓国産業通商資源省は13日、「早期に局長級幹部を派遣し、米側との調整に当たる」と明らかにした。まずは、共同調査でFTAが貿易不均衡の原因かどうか検証すべきだとの立場を伝える方針だという。
文大統領も両国間貿易について「商品では米国が赤字だが、サービスでは韓国が赤字。対米投資も多く、バランスを取っている」と主張しており、本交渉に入る前にトランプ政権を説得しようとの思惑がにじむ。
トランプ氏は6月末の首脳会談後の共同会見で「FTAの再交渉をしている」と表明し、韓国側を慌てさせた。文氏は「再交渉は合意外の話だ」と否定したが、後の祭りだった。共同声明にも再交渉は盛り込まれなかったが、米政府は韓国側の意向に関係なく、内部で着々と準備を進め、機先を制したことになる。
合同委員会の特別会合は一方から要請があれば、30日以内に開くことが規定されている。会合即再交渉を意味しないが、前段階の協議入りは避けようがない。
しかし、韓国側の議長となる通商交渉本部長さえいまだ任命されていない状況だ。文政権は、組織改編で同本部を立ち上げ、対外的には本部長を閣僚級にするなど、体制の強化を計画した。だが、少数与党の文政権にあって野党が国会運営の主導権を握る中、組織法改正案の通過も見通しが立っていない。体制強化策が裏目に出て、文政権はスタートからトランプ政権に大きく出遅れている。