北朝鮮情勢をめぐる米朝間の緊張関係が長期化すれば、安全資産とされる円が買われて円高が一段と進む恐れがある。企業や家計が警戒感を強めれば、設備投資や個人消費への打撃も懸念される。市場では、対ドルで10円程度円高に振れれば、国内総生産(GDP)が0.4%程度押し下げられるとの試算もあり、回復基調にある日本経済に水を差しそうだ。
「北朝鮮が新たな段階の脅威になっていることは間違いない」
茂木敏充経済再生担当相は15日の記者会見でこう述べ、動向を注視する考えを示した。特に日本経済への影響が大きいとみられるのは外国為替の動向だ。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、足元で1ドル=110円程度の円相場が有事には90円台へ突入する恐れがあるとみる。
永浜氏は企業や消費者の心理が冷え込み、GDPの7割を占める設備投資や消費が落ち込むほか、企業のドル建て利益も目減りすると指摘。その上で「10%(10円程度)の円高でGDPが0.44%押し下げられる」と試算する。
また、直接打撃を受けるのが航空・海運や旅行業界だ。JTBによると7月15~8月31日のサイパン・グアム方面への旅行者数は推計で12万9千人。有事になればツアーの中止に加え「海外旅行全体の需要が落ち込む恐れがある」(同社)という。海運会社も「有事で海上輸送の荷量が減れば貿易や経済活動に影響が出る」(川崎汽船)と警戒を強めている。