国内総生産(GDP、季節調整値)速報値が高い伸びを示したことは、「物価2%上昇目標」を掲げる日銀にとっても追い風といえる。企業業績の改善が消費や設備投資に波及する経済の好循環に向けた足取りが着実なものになってきたとの見方ができるからだ。
だが、肝心の物価上昇率は0%台前半。欧米で金融政策正常化の機運が高まる一方、日銀の「異次元の金融緩和」を縮小する「出口戦略」への道のりは遠い。
今回のGDPは、自動車や白物家電の買い替え需要に加え、人手不足に対応した自動化投資が全体を押し上げた。今後、自動化投資が一巡すれば、賃金を上げざるを得なくなると日銀は分析する。従業員への賃上げを通じて個人消費が拡大し、物価が上昇するとの日銀のシナリオまであと一歩のところまできている。
だが、企業の賃上げに対する慎重姿勢はかたくなだ。終身雇用の日本で、賃上げを進めればコスト負担が重いからで、労働者1人当たりの平均賃金を示す6月の現金給与総額は、夏のボーナスが前年割れしたことが響き、前年を下回る。
賃上げしても、採算が取れると判断できる経済環境の整備が急務といえる。(飯田耕司)