インドネシアは、政府による所得税の徴収対象となる所得水準引き下げの動きが浮上し、労働組合が反発の構えをみせている。スリ・ムルヤニ財務相が7月、水準を引き下げた場合の影響調査を同省で実施したことを明かしたのがきっかけだ。現地紙ジャカルタ・ポストなどが報じた。
インドネシアでは現在、年間所得5400万ルピア(約44万8200円)以下が所得税の免除対象になっている。昨年5月までは3600万ルピアだったが、景気減速を受けて購買力強化と個人消費促進のために6月に引き上げられていた。
財務省幹部は、同国が州ごとに異なる最低賃金を採用していると指摘し「最低賃金の低い州では税収の落ち込みが激しい」と述べて水準見直しの必要性を訴えた。昨年までの一律3600万ルピアに戻すか、州ごとの最低賃金に合わせた水準に変更するかのどちらかにしたい考えだ。
今年の最低賃金をみると、最も安い西ジャワ州、中央ジャワ州、東ジャワ州、ジョグジャカルタが月150万ルピアで、最も高いジャカルタは倍の月300万ルピアとなっている。
また、同国は歳入の85%を税収が占めていることもあり、政府としては税収基盤拡大で歳入増を図り、インフラ整備などへの支出を支えたい狙いもある。同国の国内総生産(GDP)に占める税収の割合は10.3%で、近隣のマレーシア、タイ、フィリピンよりも低い。インドネシア政府は、この比率を18年までに12%、19年に16%へと高める目標を掲げている。
この政府の動きに対し、インドネシア労働組合総連合(KSPI)は即座に反対の姿勢を打ち出した。KSPIのサイド・イクバル代表は、現状でも低所得層の購買力は低いとし「低所得の労働者に網を広げるよりも、政府はまず高所得層からの徴収もれの対策をすべきだ」と述べた。(シンガポール支局)