7月の貿易統計で8カ月連続増となった日本の輸出は、年後半にかけてもプラス基調は続く見込みだ。世界経済の回復や円安が後押ししている。もっとも、北朝鮮情勢の緊迫化などで急激な円高が進めば下押し圧力になる。保護主義に傾くトランプ米政権の通商政策も先行きに影を落としている。
7月の輸出は自動車だけでなく、半導体など電子部品、建設機械、船舶など幅広い品目で増加した。景気の持ち直しが続く米国と欧州、中国などアジアの堅調な需要に支えられている。
第一生命経済研究所の斎藤麻菜エコノミストは「世界経済の拡大を背景に輸出は増加を続ける」と予測する。資源価格の上昇で輸入も増加しているが、貿易収支は今後も黒字基調を維持する可能性が高い。
懸念材料は地政学リスクだ。外国為替相場は今月11日、ミサイル発射計画をめぐり北朝鮮情勢の緊迫化が意識され、一時、約4カ月ぶりの円高水準となる1ドル=108円台後半となった。急激な円高が進めば、輸出競争力が弱まる。貿易赤字の削減を目指すトランプ政権の通商政策もリスク要因といえる。
7月の米国向けの自動車部品の輸出は前年同月比11.3%増の841億円だった。だが、16日に始まった北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で、米国は域内で生産した部品を一定比率使えば完成品の関税をゼロにする「原産地規則」の見直しを要求。比率が引き上げられれば、域外である日本からの部品輸出には逆風になる。
7月の日本から米国への自動車輸出は約16万台に上ったが、米国からの輸入は約1500台だった。トランプ大統領は日本市場を閉鎖的と批判しており、経済対話などで不均衡是正を求めてくる懸念もある。(田村龍彦)