東京・渋谷のNHK放送センター【拡大】
民業圧迫との批判も
NHK会長の諮問機関は先ごろ、受信料徴収のあり方に関する答申案をまとめたが、事実、この中でもネット同時配信の「費用負担のあり方」が先行して議論されている。
答申案では、対象世帯の78%にとどまっている受信料の徴収率を上げるため、不払い世帯への割増金賦課、未契約世帯のあぶり出しに電力会社やガス会社の個人情報を活用することなどが提案されている。
有識者会議といえども、答申にはNHKの意向が色濃く反映される。読売は8月3日付社説で「法が禁じる個人情報の目的外使用に該当しないのか」と厳しい目を向けた。
一方、若者のテレビ離れが進む中で「新たな視聴者を獲得したいという考え方は理解できる」としたのは7月31日付の日経社説。「優良なコンテンツの制作を続け、激しさを増す海外での販売競争に勝つためにも、時代の変化に合わせて収益を確保する努力は必要だ」と有料化にも後押しする姿勢を示した。
ただ、その日経社説も、「受信料制度に支えられたNHKがネット事業に本格的に参入すると、この分野の既存企業にも脅威となる」と述べ、サービスの本格化に当たっては「民間企業が投資を続けられる環境を整えることが重要だ」と配慮を求めた。
同時配信には、数十億円の初期投資が必要とされ、年間の維持費も数十億から100億円かかるという。NHKが日本の放送事業の牽引(けんいん)役を担っているのは分かるが、競争を迫られる民放各社には相当な負担だ。
民放キー局がNHKへの対抗上、ネット同時配信に乗り出せば、同じ番組を放送する地方局は経営を脅かされる。サービスの性急な推進は、民業圧迫と民放側が反発するのは当然だ。