【衆院解散】消費税使途変更論浮上財政健全化目標、遠のくか 教育無償化へ「重要な視点」

会見する自民党の二階俊博幹事長(中央)ら=19日午前、東京・永田町の自民党本部(斎藤良雄撮影)
会見する自民党の二階俊博幹事長(中央)ら=19日午前、東京・永田町の自民党本部(斎藤良雄撮影)【拡大】

  • 財政制度等審議会の分科会であいさつする麻生太郎財務相(右)と財政審の榊原定征会長=19日、財務省

 自民党の次期衆院選公約に、平成31年10月に消費税率を予定通り10%に引き上げ、教育の無償化などの財源に充てることを盛り込む案が浮上してきた。安倍晋三政権の新たな看板政策「人づくり革命」の推進に向けた財源をひねり出すのが目的だ。ただ、使途を組み替えれば財政健全化に充てる財源は減り、32年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標の達成は遠のくことになりかねない。

 「(増税分の使途変更は)大変重要な視点。党内で議論し、政策の中身を固めて、国民に批判を仰ぐ姿勢で臨むことは当然だ」。自民党の二階俊博幹事長は19日の記者会見でこう述べ、増税分の使途変更について党内で検討する考えを表明した。

 24年の「税と社会保障の一体改革」をめぐる自民、公明、旧民主の3党合意では、消費税率を5%から10%に引き上げた際の増収分約14兆円のうち約2割を社会保障の充実に、約8割を国の借金返済などの財政健全化に割り当てることになっている。

 使途変更案では、この割合を見直し、社会保障への割り当てを増やして子育て支援や教育無償化の財源に充てる。文部科学省によると、教育無償化に必要な追加財源は3~5歳児の幼稚園・保育園が約7千億円で、「使途の変更で同規模の財源は確保したい」(与党関係者)との考えのようだ。

 自民党内では、教育無償化の財源確保の手段として、企業と従業員が負担する「こども保険」の創設が提案されているが、「受益と負担のバランスが悪い」などの理由で経済界の反対も根強い。

 ただ、消費税増税分の使途を変更すれば、見込んでいた財政健全化の財源の減少は避けられない。麻生太郎財務相は19日の記者会見で「(財政健全化とのバランスが)保たれるようにしないといけない」と強調した。財務省内では使途変更による財政悪化を懸念する声も上がっており、PB黒字化目標は数年先送りされるとの見方も強まっている。