【高論卓説】北との関係、湾岸諸国に変化 クウェートも圧力、国際社会に歩調 (1/3ページ)

 北朝鮮情勢が緊迫の度を高めている。核・ミサイル実験を続ける同国の金正恩・労働党委員長と、同氏を“ロケットマン”と揶揄(やゆ)するトランプ米大統領の舌戦がますます拡大し、いずれかの時点での軍事衝突の危険性も排除できなくなってきたからだ。

 こうした中、今月8日から13日にかけ中東・湾岸5カ国を訪問した河野太郎外相は、国際社会が一致して北朝鮮に圧力をかける必要性を各国で強調するとともに、一部の国では北朝鮮からの出稼ぎ労働者を受け入れないよう要請した。北朝鮮にとって労働者派遣による外貨獲得が核・ミサイル開発の有力な資金源の一つとなっているからだ。

 王制・首長制国家で構成する湾岸協力会議(GCC)諸国のうち、サウジアラビアを除くクウェート、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、バーレーン、オマーンの5カ国は北朝鮮と外交関係を持つ。特にクウェートには北朝鮮の大使館が置かれ、北朝鮮の駐クウェート大使が駐UAE、駐カタール、駐バーレーン大使も兼任している。

 湾岸で働く北朝鮮の労働者数は推定約1万人である。海外で働く北朝鮮の労働者総数が2015年初めで約10万人とみられているので、その約1割が湾岸にいることになる。最も多いのがクウェートの約6000人で、UAE、カタールにも少なくともそれぞれ1300人、1000人はいるようだ。

 建設現場が主体である湾岸の北朝鮮労働者の平均月収は約1000ドルだが半額は政府の取り分とされる。仮に政府取り分が1人500ドルとすれば、約1万人なら年間6000万ドル(約66億円)が北朝鮮政府の収入になる。

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