【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(49) (1/3ページ)

村の中を走る乗用トラクター。運転しているのは、件の水道料金徴収権を落札した大農アウンセイン氏の息子=2017年8月、マグエー郡カンターレー村(筆者撮影)
村の中を走る乗用トラクター。運転しているのは、件の水道料金徴収権を落札した大農アウンセイン氏の息子=2017年8月、マグエー郡カンターレー村(筆者撮影)【拡大】

 ■23年ぶりの半乾燥地農村調査(上)

 エーヤーワディ川の中流域、ミャンマーの中央部には「ドライゾーン」と呼ばれる乾燥した平原が広がっている。この地域では、一部の潅漑(かんがい)田を除き、ミャンマー農業を象徴する水稲を見ることはなく、ゴマやラッカセイが作付けされる畑地が展開している。マグエー県マグエー郡カンターレー村も、そのような乾地畑作農業地帯の中にある農村である。1994年11月、私はこの村の一農家に住み込んで、村の家や農地を歩き回って、社会経済調査を行った。そして2017年8月、23年ぶりにこの村を再訪し、当時調査した家々や耕地を訪ねてみることにした。

 ◆自力で電化

 1994年の村の総世帯数は203だったが、2017年には285に増えていた。このうち農地を保有する、いわゆる農家は109世帯から130世帯へと21世帯増加しただけだったが、農地を持たない非農家は94世帯から155世帯に61世帯も増加した。農家はほとんど増えず、非農家だけが増加するというパターンは、本見聞録でこれまで登場したミャンマーの村々と同様である。

 村に入って、こんなもの前になかった、とすぐに気づいたのが電線と水道とトラクターとオートバイだった。

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