NAFTA再交渉、行き詰まれば日本に矛先? FTAごり押しを懸念

 米国とカナダ、メキシコの3カ国は17日、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の年内妥結を断念し、トランプ米大統領が示唆する協定の脱退が現実味を帯びてきた。交渉が行き詰まった場合、米国は通商分野で得点を稼ぐため日本に矛先を向ける恐れがあり、日米FTAや市場開放をごり押しする懸念が強まる。

 「NAFTAに割いていた人員を日本との交渉に回される事態になると怖い」

 通商筋はこう指摘する。米通商代表部(USTR)は所帯が小さく、NAFTAや米韓FTAの再交渉、最大の貿易赤字国である中国との交渉に忙殺されているうちは日本に注力する余裕はない。政府内ではそう期待する声が強かったが、風向きが変わりつつある。

 トランプ氏は米国から巨額の貿易黒字を稼ぐメキシコを敵視し、NAFTA脱退やカナダとの2国間協定締結を示唆して揺さぶりをかけている。こうした姿勢にメキシコとカナダは態度を硬化させ、交渉の継続が危ぶまれる状況になった。

 来年11月の中間選挙までに得点を稼ぐ必要があるため、既存のFTAを米国有利に見直し貿易赤字の削減を図るのがトランプ政権の作戦だ。しかし、NAFTA再交渉に全米商工会議所などが反発する中、成果が挙げられなければ政権への逆風は一層強まる。

 そこで標的になりそうなのが日本だ。米国は16日の経済対話でFTA交渉の開始を事実上要求。中国に次ぐ「第2の貿易赤字国」として圧力を強める構え。

 FTA締結には長期間の協議が必要で、米国が期待する短期間の成果には直接つながらない。ただ、交渉入りを避けたい日本に圧力をかけ、赤字削減につながる一層の譲歩を引き出す戦術も想定でき、日本は11月のトランプ氏来日に向け対策の検討を迫られそうだ。

(田辺裕晶)