【中国を読む】なぜ中国はICOを全面禁止に 日本総合研究所・関辰一 (1/3ページ)

 中国政府は、ICO(Initial Coin Offering、新規コイン公開)による資金調達を全面的に禁止した。これは、投資家を保護するための措置であるばかりでなく、資本流出を予防するため、さらには政府の金融統制を守るための措置でもある。ICOを用いれば、企業はインターネットでたやすく資金調達できる。資金調達方法の自由化・民主化に繋(つな)がるICOは中国政府にとって脅威だったのだ。

 ◆経済金融秩序を乱す

 9月4日、中国人民銀行や銀行業監督管理委員会など7つの政府機関が連名で、各種の仮想通貨発行による資金調達を禁止する声明文を発表した。同声明文では、このところICOを含む仮想通貨発行を通じた資金調達が急拡大しており、これは投機的な動きや違法な金融活動に繋がり、経済金融秩序を大いに乱していると背景を説明した。

 ICOは企業による資金調達の一種である。企業が「ホワイトペーパー」と呼ばれる事業計画書をインターネットに公開して、個人や企業から資金を集めるものだ。ブロック・チェーン技術を基に独自の仮想通貨を出資者に発行することが特徴である。出資者は、株式のように出資額に応じた配当や議決権を得られるわけではなく、仮想通貨の値上がり益や発行者が将来提供するサービスに期待して、資金を投じる。

 2017年に入り、ICOによる資金調達規模は急拡大してきた。国家互聯網金融風険分析技術平台(国家インターネット金融リスク分析技術プラットフォーム)の「2017上半年国内ICO発展情況報告」によると16年までICOはわずか5件。ところが17年1~4月に8件、5月に9件、6月に27件と急増し、7月も18日までで16件という高水準だった。これら65件のICOの資金調達規模は、累計26.16億元(約448.34億円)に達した。