自民党が衆院選で圧勝し、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」は有権者から一定の信任を得た。ただ、日本経済の実力を示す潜在成長率は1%程度にとどまり、賃金も伸びず、個人消費が低迷するなど課題も残る。「道半ば」のアベノミクスを加速させるには、少子化で労働力が減っても経済成長できるよう、規制緩和で企業が参入できる分野を増やしたり、教育を通じて技術革新を担う人材の裾野を広げるなど、構造的な改革が必要となる。
中長期の政策進まず
足元では日経平均株価が2万円台と、政権発足当時の2倍以上に値上がりし、雇用では、8月の有効求人倍率が7月に続き1.52倍と、約43年ぶりの高水準が続くなどしている。
ただ、改善を大きく後押ししたのは、アベノミクス「第1の矢」である金融政策だ。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「短期的に(金融政策という)カンフル剤が効いている。少子化対策や成長戦略といった中長期的な取り組みは進んでいない」とする。実際、日本の国内総生産(GDP)成長率は先進国でも低い。働き手が減るなどして成長力が落ち、潜在成長率がリーマン・ショック後の0%前後よりは回復したものの、依然低いことなどが背景にある。
これを補うには企業や労働者の生産効率を上げることが重要だ。東洋大の竹中平蔵教授は必要な改革の一つとして「収益を上げられない企業から上げられる企業へ労働者が移れるよう、労働市場を柔軟にすることが必要だ」と話す。