商工中金「解体的出直し」か 経産相は完全民営化を否定せず、年内に結論公表

商工中金本店=東京都中央区(菊本和人撮影)
商工中金本店=東京都中央区(菊本和人撮影)【拡大】

 国の制度を悪用した不正融資が発覚した商工中金に対し、経済産業省は11月、同社のガバナンス(企業統治)改革などを検討する有識者会議を開く。最大の焦点は先延ばしされてきた完全民営化で、世耕弘成経産相も抜本的な経営改革を視野に入れる。ほぼ全店で不正が蔓延(まんえん)し、実態を隠蔽(いんぺい)しようとした商工中金の立て直しには“解体的出直し”が求められる。

 世耕経産相は27日の閣議後記者会見で、完全民営化について「(有識者会議では)ゼロベースで議論いただく。検討の結果、出てくれば受け止めて対応したい」と否定しなかった。

 会議では再発防止策や社外取締役の増員といった経営の透明性を高める案を検討する。不正の温床となった「危機対応融資」制度も見直し、年内に結論を公表する。

 もともと、商工中金を含めた政府系金融機関は資金力の乏しい民間銀行を補完し、中小企業などに融資するために設立された。民業圧迫との声を受け、商工中金は2008年から段階的に民営化されるはずだった。だが、同年のリーマン・ショックで民間の金融機関で貸し渋りが横行すると、商工中金が危機対応融資で中小企業を支え、民営化は先送りされた。

 今回の不正融資の責任をとって、元経産事務次官の安達健祐社長は辞意を表明しており、世耕経産相は後任に民間出身者を充てる考えを示している。

 もっとも、「リーマン・ショックではトヨタ自動車ですら商工中金頼みだった」(経産省幹部)と、民営化には慎重論も根強い。

 一時的なトップ人事にとどまらない抜本的な改革案が示されるか注目される。