安倍首相の3%賃上げ発言に労使混乱、経団連は残業減対応優先、連合は格差拡大と警戒

 安倍晋三首相が経済界に対し、「3%の賃上げ」への期待感を表明したことが波紋を広げている。労働組合の中央組織である連合は、大企業だけが賃上げすれば格差拡大が問題になるとして警戒感を示す。経団連は働き方改革で残業時間の上限規制が導入された場合の対応を先行させるとし、賃上げに関する議論は12月以降に先送りする方針だ。

 「官製春闘」とも呼ばれる首相からの経済界への賃上げ要請は5年連続だが、具体的な数値が示されたのは初めて。ただ、春闘で従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)2%と定期昇給を合わせて4%の賃上げを求める方向で最終的な調整に入っている連合は、反発を強める。

 神津里季生会長は「お上が音頭をとれば素直に3%の賃上げに向かうという発想は、大企業だけが対応でき、中小企業などはついていけず、格差拡大を繰り返す」と批判。その上で「取引慣行の是正など、賃上げに向けた労使の中身の議論が重要だ」と指摘する。

 一方、経営側は首相の要請を受けても、すぐに議論に入るのが困難な状況だ。春闘指針「経営労働政策特別委員会報告」を取りまとめる経団連は、働き方改革で導入が見込まれる残業の上限規制への対応策の検討が喫緊の課題となっているからだ。

 大和総研の試算によると、残業が月60時間に抑えられると残業代は年間8兆5千億円減少するなど影響は大きい。経団連では、個人消費拡大のために賃上げを呼び掛けてきた。残業規制が導入された後も、子育て関連手当の拡充や残業時間にかかわらず一定の残業代を支払うなどして給与水準が維持できるような制度を検討しており、対応策の検討を優先させる考えだ。