【高論卓説】困難極める核廃棄交渉 北朝鮮、常備軍削減がもたらす“皮肉な”経済成長 (1/2ページ)

 テルアビブ大学のアザー・ガット教授は、戦争の歴史を分析した著書『文明と戦争』(中央公論新社)の中で、国家が持続可能な常備軍の規模を人口の1%までであると指摘した。国家と軍備の規模を比較する場合、通常は軍事費の対国内総生産比率や国家予算比率で比較するものだが、このやり方であれば、国民経済計算が開発される以前の昔の国々についても比較することができる。国民経済計算が登場するのは1929年の大恐慌以降のことで、歴史上の比較分析にはあまり向いていない指標なのだ。

 原則上、全員に兵役義務があった紀元前2000年のエジプトでも300万人の人口に対して2万人(0.67%)の兵がいたにすぎない。また、ローマ帝国の人口は、ピークといわれた紀元前200年でも4600万人、1%ならば46万人だが、ディオクレティアス帝(在位284~305年)のときには60万人の兵をそろえた。しかし、これは財政を圧迫する持続不可能な数字だったのだ。フランスの太陽王、ルイ14世(1643~1715年)は戦争ばかりしていたが、常備軍が人口の2%にまで達すると、深刻な財政問題を抱えることになった。

 1894年の日清戦争のときの日本の人口は4200万人、常備軍は7個師団を中心としたもので、約24万人で戦った。これは人口の0.57%である。また1904年の日露戦争では常備軍約15万人、これに補充兵や徴兵対象者の拡大などを通じて、最終的には109万人を動員した。当時の人口4700万人に対して総動員で2.3%しかないが、それでも当時の日本は財政的にも国力の限りを尽くしたと考えていた。

 高価な最新装備を誇る現代のわが国の防衛費においても、その45%は人件費と糧食費である。大きな常備軍をつくると人件費にコストがかかる。また、働き盛りの貴重な労働人口を生産活動から遠ざけてしまう。この結果、大きな常備軍は経済成長を阻害する要因となり、経済力が重要な要素となる戦争に対してはマイナスの要因にもなりかねないのだ。

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