【高論卓説】日本経済、「死角」は地政学リスク 北、中東の懸念消えない偶発的衝突 (1/2ページ)

 日本経済にとって、アベノミクス・スタート直後の2013年以来の追い風が吹いている。世界経済が回復基調を続ける中、米欧日の中央銀行の政策スタンスの「差」を意識した日本株への資金流入が背景にある。米長期金利(10年債利回り)の上昇が緩やかであるため、景気拡大の波は長期化しそうで、その点でも日本経済にはプラスとなる。「死角」なしに見える前途にあるリスクは、北東アジアと中東の地政学リスクではないか。

 今年は夏場を迎えても、国内勢の日本株に対する見方が慎重だった。バブル崩壊後の高値を抜け、約25年ぶりの水準まで日経平均株価が買い進まれるとみていた参加者は、あまりいなかったと言っていいだろう。

 米経済の拡大は、各種の指標を見てもはっきりしており、年央から欧州経済の復調も鮮明化。中国経済の堅調な需要動向もあいまって、だれの目からみても、足元における世界経済の回復基調ははっきりしてきた。

 そこに長短金利の操作を行う日銀の「イールドカーブ・コントロール」(YCC)政策の継続効果が重なる。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ路線と欧州中央銀行(ECB)の出口戦略模索が並行して進む中で、日銀の緩和スタンスは際立っている。

 世界の需要が強く、超低金利政策が長期化すると分かっている国の株は「買い」と見る参加者が多くなるのは、ある意味で「教科書」通りの展開といえる。

 さらに最近、欧米で注目されているのは、景気が良くなっても物価が上がらず、長期金利も急反発しない現象だ。FRBが来年に入って1回に0.5%の利上げを強いられるとみている参加者は、ゼロだ。

逆に言えば、政策的な「圧迫」なしに景気拡大が進む