【高論卓説】中国の「イノベーション国家」志向 (1/2ページ)

 ■「創新」には民間の活力が不可欠

 北京の秋が深まる10月下旬、中国共産党の第19回党大会が開かれた。北京ではかつて話題となった「APECブルー」のような澄み切った青空が続いたようだが、それよりも党の幹部人事や中国の今後に関心が寄せられたのは言うまでもない。

 習近平総書記(国家主席)が行った国政運営に関する報告で打ち出したキーワードの中で、中国経済の「質の成長」の重要性に対する認識と、具体的な発展方針を強調した「イノベーション国家」志向に注目したい。

 中国語で「創新」と書かれるイノベーションは技術革新のことだが、科学技術の進歩から、研究機関や企業の研究・開発能力の向上、起業の推進まで多くの要素が含まれる。イノベーション国家は2006年に提唱されたが、これまでは国主導の研究費増加や基礎研究への取り組み、特許登録件数の増加などが中心となってきた。ただ、イノベーション国家の実現において最も不可欠なのは民間の活力で、近年中国では民間主導のイノベーションが活発化していることが特筆される。

 とりわけ、情報通信技術(ICT)の進展やネットビジネスが目立ち、こういった分野の発展は党大会の報告でも触れられた。その好例は電子決済の進展だ。中国ではもともとクレジットカードの普及率が低かったが、02年に「銀聯カード」が誕生してから電子決済が普及していった。そして現在、環境は一気に様変わりしており、中国に行くと高級百貨店から道端の屋台、地下鉄・バスからタクシー、そしてレンタル自転車まで、さまざまな場面でスマートフォンをQRコードにかざすだけで決済が完了できることに驚かされる。わずか数年間で、大手ICT企業が生み出した、スマホ決済をはじめとする第三者決済サービスが急速に普及し、中国社会のキャッシュレス化を一気に加速させている。