地上型イージス導入を前倒し、巡航ミサイルも導入方針 敵基地攻撃可能に

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 政府が、敵基地攻撃も可能な戦闘機用の巡航ミサイルを導入するため平成30年度予算案に必要経費を盛り込む方針を固めたことが5日、分かった。地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入に向けた調査費を29年度補正予算案に計上する方針であることも判明した。1億円規模の見通し。30年度予算案に盛り込む予定だったが、一部を前倒し措置する。北朝鮮情勢が緊迫する中、弾道ミサイルから国民を守る態勢の強化を急ぐ。

 複数の政府関係者が明らかにした。30年度予算案に費用を計上するミサイルはノルウェーなどが開発中の「JSM(ジョイント・ストライク・ミサイル)」。射程は約500キロとされ、空から艦艇を攻撃する「空対艦」と、地上目標を狙う「空対地」の2つの能力を持つ。今年度から空自に配備される最新鋭ステルス戦闘機F35Aに搭載する。自衛隊が空対地ミサイルを導入するのは初めてで、現有装備よりも大幅に射程が伸びる。

 政府は、米国製対地ミサイル「JASSM-ER」と、対艦・対地ミサイル「LRASM」の導入に向けた経費も30年度予算案に計上する方針だ。空自戦闘機に搭載するための改修関連費用を盛り込む。射程は900~1000キロ程度とされ、日本海上空からでも北朝鮮へ届く。

 一方、イージス・アショアは2基で日本全土をカバーできる。1基約800億円で、陸上自衛隊が運用する方向だ。政府は30年度予算案の概算要求で、イージス・アショアを中心とした新規装備品取得を盛り込んでいた。しかし、北朝鮮は今年だけで14回も弾道ミサイルを発射しており、前倒しが必要と判断した。

 補正予算で前倒し措置することで、米国からの情報取得、配備地の選定や地元との交渉といった作業に早期に着手できる。防衛省は秋田、山口両県への配備を念頭に置くが、省内外に異論もあり、引き続き調整する。このほか補正予算には空自の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)改良型の取得費や警戒管制システムの能力向上、レーダー更新費なども盛り込む。