平成30年度税制改正・予算大綱 公明党、存在感回復に奔走

平成30年度税制改正大綱について会見で説明する自民の宮沢洋一(右)、公明の斉藤鉄夫両税調会長=14日午後、東京都千代田区の衆議院第二議員会館(飯田英男撮影)
平成30年度税制改正大綱について会見で説明する自民の宮沢洋一(右)、公明の斉藤鉄夫両税調会長=14日午後、東京都千代田区の衆議院第二議員会館(飯田英男撮影)【拡大】

 与党が策定した平成30年度税制大綱と予算大綱では、10月の衆院選で議席を減らした公明党が自民党の原案を修正させる場面が目立った。これに同調したのが財務省の増税路線に批判的な首相官邸で、所得税改革では会社員が増税となる年収基準を土壇場で再修正させるなど成果もあがった。しかし衆院選公約の主軸に据えた私立高校授業料の実質無償化では必要財源を十分確保できないなど、存在感を完全に回復するには至らなかったようだ。

 「都市部の納税者の実情を把握した税制議論ができたのは、公明党らしい取り組みが税制議論に反映された結果と自負している」

 公明党の山口那津男代表は14日の記者会見で、30年度税制改正で、所得税が増税となる会社員の年収水準が「年収800万円超」の原案から「850万円超」へと緩和したことなどを実績として誇ってみせた。

 公明党は衆院選で子育て政策を公約の中心に掲げただけに、子育て世帯が多い中間層への増税には激しく反発。与党幹部だけで合意した「年収800万円超」の再調整を自民党税調幹部に迫り、大綱策定の数日前になって「850万円超」へと修正させた。

 自民党税調は、通常であれば一度決めた増税内容を修正することはないが、土壇場で「動かぬ山」を動かしたのは首相官邸だ。菅義偉官房長官は周囲に「800万円超では(増税が)きつすぎる」と周囲にこぼし、官邸側から党税調に路線転換を迫ったという。

 公明党は税制改正では存在感をみせたものの、予算編成では足元をみられる場面もあった。私立高校授業料の実質高校無償化では、公明党が主張した「年収590万円未満」の全世帯を無償化できる財源を完全に確保できず仕舞い。公明党幹部は「文言は入ったが、問題は本当に財源を確保できるかだ。まだまだ安心できない」と語り、苦虫を噛み潰した。