日本でもPOT普及の動き 債券発行の透明性向上、売れ残り抑制

 債券の発行条件を決める手法として、機関投資家の動向を関係者間で共有する「POT(ポット)方式」を採用する発行体が日本でも徐々に出始めている。需要情報の透明性が高まり、散見される売れ残りを抑える効果もある。

 入れ物を意味するPOTでは主幹事証券が投資家の名称や購入額といった情報をシステムに入力して発行体と共有する。正確な需要を基に価格交渉ができ、カラ需要に伴う募残も生じにくい。12月の戸田建設環境債、10月の新韓銀行サムライ債、8月の積水ハウスハイブリッド債はPOTで条件が決まった。日本銀行のマイナス金利政策下で、条件決定の難易度が高まり、目につき始めた売れ残りにもPOTは有効だ。

 欧米はPOTが一般的だ。だが、日本では各主幹事が投資家の詳細を伏せて総需要のみを報告する「リテンション」方式が定着している。独自の販売網開示に消極的な主幹事、個別銘柄の投資戦略開示に反対する投資家はPOTに前向きではない。実際に2016年9月の三菱商事の劣後債以降は目立つ事例が途絶えていた。とはいえ、POTは募残対応に有効な上、最近増加しているグローバル円債は原則POTが採用される。

 積水ハウスや戸田建の主幹事を務めた三菱UFJモルガン・スタンレー証券の諏訪一・投資銀行本部共同デット・キャピタル・マーケット部長はPOTについて「日本の社債市場の課題である透明性向上によりプライシングの信認が高まる。投資家は注文が一元化でき業務効率化が見込める上、発行体もより詳細な投資家動向を把握できるメリットもある」と話した。複数の引受会社関係者は、グローバル円債を通じて投資家がPOTに慣れる中、日本でも徐々にPOTが拡大すると予想した。

 戸田建環境債では単独主幹事でのPOT、複数の証券会社が主幹事を担当した清水建債では中央投資家に限り情報が共有され、地方投資家の需要についてはリテンションが採用されている。ある大口投資家は外債投資が一般的だとして、実際にPOTが日本で導入されたとしても強く抵抗する理由はないと話す。

 一方で、POTによる引受リスク・手間の軽減に伴う手数料引き下げ議論が水面下で行われていると引受関係者は指摘。また透明性向上は発行条件に投資家の言い値を反映することを求められるため、発行体は調達コスト増にもつながる可能性があるなどPOTには慎重論も根強い。(ブルームバーグ Issei Hazama)