【専欄】引き締めの手綱緩めたか? 拓殖大学名誉教授・藤村幸義

 習近平政権は昨年末、恒例の経済工作会議を開催し、今年の経済運営方針を決めた。中国経済はあり余る余剰資金を背景に、国内では再びバブル経済の様相が顕著となり、一方海外では「一帯一路」に便乗した採算性の低いインフラ関連プロジェクトの展開やずさんな企業買収の動きが目立った。

 このため昨年半ばから厳しい引き締め政策に転じていたが、今回の会議ではこうした方針を基本的には継続するものの、前回(2016年末)の会議に比べるとやや手綱を緩めたとの印象がぬぐえない。

 今回は習近平政権にとって、2期目のスタートとなる節目の会議となった。それだけに党大会で打ち出した経済成長の「量」から「質」への転換を目いっぱい強調している。そのための関連統計の整備や成績評価制度の確立も盛り込んでいる。

 経済成長率については、前回には「適度拡大総需給」の言葉があったが、今回は削除されている。具体的な目標値は来年春の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)での発表となろうが、やや下げてくるかもしれない。「質」を優先させ、成長率にはあまりこだわらないとの方針が随所ににじみ出ている。

 ところが景気対策については、前回ほどの厳しさがみられない。金融リスクの危険性排除はうたってはいるが、最悪期は脱したとの認識があるからだろうか。「金融リスクの防止をさらに重要な位置に置く」とか「資産バブル排除に力を入れる」といった表現は消えている。

 不動産市場についても前回は「不動産バブルを抑制し、相場の乱高下を防ぐ」としていたが、今回はそうした文言はなく、「賃貸住宅市場の発展を」が主要メッセージとなっている。

 あまりに引き締めすぎると、成長率を想定以上に引き下げてしまう恐れはある。習近平政権がその点を懸念したのは分からないでもないが、まだ危険な芽はあちこちに残っている。

 国内では、地方政府の財政管理に多くの問題がある。その最たるものがPPP(官民パートナーシップ)だ。地方政府は民間資本の導入によってインフラ整備を促進できるとあって、安易に取り入れようとしているが、いい加減なプロジェクトが多いようだ。

 海外では、「一帯一路」沿線国を中心に多くのプロジェクトを展開しているが、このところ暗礁に乗り上げるケースが続出している。リスクを減らすために、より引き締めを強化する必要があるのではないか。