【ジャカルタレター】防災・減災分野で日本と連携強化を

 昨年12月15日午後11時47分、西ジャワ州の南の海岸沿いでマグニチュード6.9の地震が発生した。中部ジャワ州沿岸部のチラチャップ市の友人は、船に乗っているように家が揺れたため、飛び起きて急いで家を出て、近所の人たちとともに、海から離れた高い場所に逃げたという。津波警報が発令されたが、数時間で解除され大事には至らなかった。

 インドネシアでは、耐震・免震設計の家があるわけではないため、地震での被害の多くが、崩れた家の下敷きになる「圧死」であり、いち早く家から外に飛び出すことが何よりも大切と学んでいるようだ。

 ◆備えなく自助頼み

 首都ジャカルタでも、今回の地震で多少の揺れがあり、住民たちはパニックに陥ったというが被害はなかった。日本と同様にインドネシアは地震大国であるにもかかわらず、防災や減災の備えはできておらず、自助と共助でしか身を守れない状況である。

 ジャカルタでは、地震もさることながら、洪水被害が深刻である。地震が発生した数日前の大雨による洪水で、またジャカルタの多くの地域が水に浸かった。洪水対策がうまく進んでいない政府を責める声も聞かれたが、ジャカルタの洪水は、さまざまな要因が長年積み重なって起きており、対策は容易ではない。雨を吸収するはずの大地はほとんどアスファルトに覆われ、植民地時代につくられた多くの運河は、ごみであふれているため、水を効率的に海に流すことができない。また、地球温暖化の影響による海水の熱膨張のため、海面が上昇していることも原因となっている。

 ◆地盤沈下が急速進行

 さらに、ジャカルタのあらゆるところで起きている地盤沈下が深刻な事態を招いているという。地盤沈下は、過剰な地下水のくみ上げが原因ともいわれている。特に北ジャカルタで顕著である。

 地盤沈下対策は日本政府も協力しているものの、ジャカルタの地盤沈下は世界の都市で最も早く進んでおり、すでに海抜ゼロメートル以下の地区が40%を占めるといわれる。このままでは、近い将来、北ジャカルタのほとんどが水に浸かってしまうと危惧する声が専門家から聞こえてくる。

 「インドネシアの多くは、目先の利益だけを追い求め、将来に向けた公共投資には関心がない。だから、今さえよければと、持続可能性を考えていない開発が続き、汚職もなくならないし、違法であっても地下水のくみ上げが止まらない」

 ジャカルタに住む友人がこう嘆いていた。洪水が続くと、交通渋滞も今以上に深刻となり、経済に大きな影響を与える。

 新しいインフラ整備も必要な中で、複雑な要因が絡み合っている洪水対策は目に見えた効果が短期間で出にくい事業かもしれない。しかし、ジャカルタの多くが水に浸かってしまう前に、危機感を高め、国を挙げた対策が求められている。防災や減災こそ、日本の経験が生かせる分野であり、インドネシアとの連携を深めて多角的な洪水対策を急ぐ必要があるだろう。(笹川平和財団 堀場明子)

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