【高論卓説】セクハラ騒ぎ、野党の離合集散、日本の針路 (2/2ページ)

 そんな中、「こだわりを捨てて、一緒になること」に「こだわる」人もいる。保身行為と非難もされようが、私も野党が本来の役割を果たすためには、今はそれが重要だと思う。信念の政治家として「こだわり」の政策を守るのは勇気があるようで、その実、精神的には楽だったりもする。

 与党も、自公のスタンスの違いが代表的だが、自民党内も、実は各人が「こだわり」を捨て、内心じくじたる思いを持ち、支持者に批判・非難されながら、苦渋の決断をして政策を進めている。安保法制にしても、消費税率の引き上げにしても、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)にしても。「物事を前に進める」という「こだわり」こそが、学者ではない、政治家の役割だと私は思う。

 保守と革新という用語が長らく日本の政治を説明してきているが、「こだわる」態度は、国語的には本来「保守」という語と親和性が高い。「墨守」に近いイメージだ。「9条を守る」「増税はさせない」という革新系が主張する「守る」態度、「こだわり」の姿勢は、日本の革新を実は止めているとも言える。

 日本を長期的に保守するため、憲法を改正して国防を強化することは当然のこととして、例えば、税制にしても、常識的には、消費ではなく貯蓄により重くかける姿勢への転換が重要だ。こうした保守派による革新的な動きは、「こだわる」革新系に止められている。

 エッセーの一体性に「こだわっ」て、無理に冒頭とつなげて考えるならば、女性も仕事も、うまくいかない場合には、ハラスメント化しないよう、「こだわり」を捨てることが肝要なのかもしれない。

【プロフィル】朝比奈一郎

 あさひな・いちろう 青山社中筆頭代表・CEO。東大法卒。ハーバード大学行政大学院修了。1997年通商産業省(現経済産業省)。プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)代表として霞が関改革を提言。経産省退職後、2010年に青山社中を設立し、若手リーダーの育成や国・地域の政策作りに従事。ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授。44歳。