無償化で待機児童増の懸念 保育所整備不十分、申し込み殺到の恐れ (1/2ページ)

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 幼児教育・保育の無償化で待機児童が増えかねない-。国が打ち出した子育て支援策をめぐり、実務を担う自治体の危機感が増している。保育所整備が十分に進まない中で無償化が実施され、利用申し込みが殺到する恐れがあるためだ。無償化となる施設や事業の線引きは夏に先送りされ、現場からは戸惑いの声が上がる。

 自治体に危機感

 「無償化で計画の見直しが必要になった」。昨年4月時点の待機児童が849人と、全国で2番目に多かった岡山市の担当者が困惑気味に語る。

 市は2019年度末までに待機児童を解消する目標を掲げ、昨夏、3400人分の受け皿の整備計画を立てた。だがその後の衆院選で、安倍晋三首相が公約として幼児教育・保育の無償化を打ち出した。19年度からまず5歳児を対象に始まるが、今年4月入所の申し込み数を既に押し上げ、競争が激しくなっている印象を抱く。「今のうちから育児休業を早めに切り上げて狭き門をくぐろうとする動きを助長するのではないか」

 独自に第2子以降の保育料を無償にしている兵庫県明石市は、手厚い支援策により子育て世帯の転入が続く。泉房穂市長が「無償化と同時に待機児童の解消」を掲げて年1000人規模の保育の受け皿拡大を進めるが、昨年4月の待機児童は全国で6番目の547人で、おととしの2倍以上。今年4月入所の1次申し込み数は前年比で約1割増えた。

 泉市長は「無償化と待機児童の解消は車の両輪で、二者択一は間違いだ」と強調。「政府は必要となる保育量を少なく見積もったまま、衆院選向けに無償化を打ち出した」と批判する。

人手不足に拍車がかかれば…