金融緩和“出口”観測、市場と攻防激化 日銀が7カ月ぶりの「指し値オペ」を実施

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 日銀は2日、長期金利の上昇を抑えるため、指定の利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を実施した。2017年7月以来7カ月ぶり。国債買い入れオペ(公開市場操作)の増額も併せて公表した。同日の国債市場は、長期金利の指標となる新発10年債の利回りが前日終値より0.005%高い0.095%で始まったが、指し値オペが通知されると金利は低下(価格は上昇)した。

 指し値オペでは、新発10年債を利回り0.110%で買い入れると通知した。市場の取引実勢より安い価格になるため応札した金融機関はいなかった。

 日銀が指し値オペに踏み切ったのは、長期金利上昇と円高の傾向が続けば景気回復に悪影響を与え、物価上昇のシナリオが崩れかねないためだ。

 東京市場では長期金利が一時、約6カ月半ぶりの高水準となり、防衛ラインとも指摘される0.1%が目前に迫る。日銀は1月31日の国債買い入れオペで残存期間が3年超5年以下の買い入れ額を半年ぶりに増やすなど市場の沈静化に躍起だが、十分な効果は出ていない。

 日銀の焦りは市場に見透かされており、事実上の“口先介入”である指し値オペもある程度織り込み済みだったようだ。外国為替市場では一時的に円安ドル高が進んだが、効果は持続せずオペ前の水準に戻った。

 金利上昇の背景には、緩和策を手じまいする「出口」が近いとの見立てがある。米欧の中央銀行が金融政策の正常化を進める中、日本の景気拡大はいざなぎ景気を超え戦後2番目の長さとなった。金融業界は「緩和縮小の機は熟した」(大手行幹部)と、日銀の動きを注視している。(田辺裕晶)