17年経常黒字高水準 日本経済、稼ぐ構図変化 米金利など懸念材料も

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 2017年の経常収支の黒字額が10年ぶりの高水準となったのは、企業の活発な海外投資と訪日客の急増が全体収支を押し上げたためだ。最近の経常収支が映し出すのは、日本経済がモノの輸出だけでなく、投資や観光で外貨を稼ぐ構造へと変化していること。ただ、米国発の世界同時株安など世界経済の先行きには懸念材料もあり、このまま経常黒字の拡大基調を維持できるかは予断を許さない。

 日本経済の外貨獲得のあり方は、08年のリーマン・ショックを境に大きく変化した。それ以前は輸出の拡大を柱とした貿易収支の黒字額が、企業が海外投資から得る利子や配当金の動向などを示す第1次所得収支の黒字額と肉薄していた。しかし、08年以降は歴史的な円高も加わり貿易収支が大幅に縮小、第1次所得収支が外貨の稼ぎ頭として定着した。17年の経常収支を見ても第1次所得収支が大半を占め、貿易で稼ぐ構図からの変化は顕著だ。

 加えて近年、新たな稼ぎ手となりつつあるのが旅行客のお金の出入りを示す旅行収支だ。17年は1兆7626億円の黒字となり、過去最大の黒字額を塗り替えた。政府は外国人旅行者数を17年推計の2869万人から20年には4000万人まで増やす目標を掲げており、今後も経常収支の屋台骨を支えるのは確実だ。

 ただ、最近の世界同時株安のきっかけとなった米金利の上昇に歯止めがかからなければ、企業や訪日客の心理を冷やし、海外投資や訪日客数に影響を及ぼしかねない。米トランプ政権の保護主義が貿易黒字の縮小をもたらす可能性も拭えず、先行きにはリスクも漂う。(今井裕治)