実体経済へ相場が「警告」 株価急落はリセッションの前兆か

 世界経済は好調だから株を買い続けよう-。ウォール街では誰もこう話しているようだ。だが、株式相場が今週動揺する中で繰り返されたこの助言に従えば、市場と実社会の間でのこれまでの情報の流れのあり方を無視することになる。その上、こうした見方は警戒する理由になる。世界経済の成長予測で、市場の方がストラテジストやエコノミストに勝っていた点を投資家は意識すべきだろう。

 ◆20%下落時で10回

 こうした助言はよく聞かれる。ジェフリーズのショーン・ダービー氏らストラテジストは、株式相場の波乱でポートフォリオは痛手を受けたが、実体経済は健全だとコメント。シティーグループのジョナサン・スタッブス氏は「低ボラティリティー(変動性)の死」はトレーディングの問題であり、並行する世界経済成長の問題ではないと分析。ブラックロック・インベストメント・インスティチュートはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が依然健全なため買いの好機だと主張する。

 一方、マーケットフィールド・アセット・マネジメントのマイケル・シャウル最高経営責任者(CEO)は、過去8営業日の動きから大きな前兆をみる。最近の値動きについて、S&P500種株価指数が9営業日で6%下落した2007年2月を想起させるという。同時点は住宅市場の変調を示す前兆だったと、現在では一般に認識されている。同氏は「これが経済や企業業績にどんな意味を持つか幅広く認識されるには数カ月を要するかもしれない」と述べた。

 調査会社CXOアドバイザリー・グループによる14年7月の調査によると、国内総生産(GDP)の変化はその後数四半期の株式相場の動きの「ごくわずかな」前触れとなる一方、株式相場が発する景気へのシグナルはもっと強い。

 大恐慌以降に米株式相場が20%下落したケースのうち、その後に米経済がリセッション(景気後退)に陥ったのは10回。20%下落という警告なしでリセッション入りしたのは4回だけだったことがブルームバーグのデータで示されている。

 ◆基礎的条件は変化

 これに対し、経済予測者の実績はこうだ。国際通貨基金(IMF)のプラカシ・ルンガニ氏の14年の研究では、09年に世界各地で発生した49件のリセッションのうち、エコノミストのコンセンサスで1年前から予想されていたものはなかった。それ以前のリポートで、1990年代の60件のリセッションで1年前から予期されていたのはわずか2件だったと分析している。

 株式市場は今のところ弱気相場からは程遠いものの、下落基調が終わる兆しはほとんど見えない。過去2週間で世界の株式市場の時価総額が3兆ドル(約326兆円)吹き飛ぶ中、株価がファンダメンタルズについて何かを伝えているのかどうか問う価値は少なくともあるだろう。

 ウェドブッシュ・セキュリティーズの株式責任者、イアン・ウィナー氏は「大したことはないと強気派が言うのは分かる。彼らは市場からのシグナルを無視できる。だが、ファンダメンタルズは変化している。利回りは上昇し、消費者の負債は過去最高水準にあり、連邦財政赤字は膨張しつつある」と指摘。「それが債券利回り上昇の理由かもしれないという事実について考えたことはあるだろうか」と付け加えた。(ブルームバーグ Elena Popina、Lu Wang)