カンボジアで学生ビジネスコンテスト 社会問題解決へユニーク提案

ビジネスコンテストで優勝した大学生チーム「スペア」のメンバー(左側の3人)=プノンペン市内(木村文撮影)
ビジネスコンテストで優勝した大学生チーム「スペア」のメンバー(左側の3人)=プノンペン市内(木村文撮影)【拡大】

 カンボジアの学生を対象にしたビジネスモデル・コンペティションが4日、プノンペン市内で開かれた。主催は、カンボジアで教育支援事業を手がける公益財団法人CIESF(シーセフ)。キリンビバレッジなど日本とカンボジアの企業が協賛している。日常生活で目にする社会問題を解決するためのユニークなビジネス案が目立ち、カンボジアの若者たちの社会意識の高まりを感じさせる内容となった。

 ◆空きスペース活用

 2010年に始まったこの大会は、今回で8回目。国内外でさまざまなビジネスコンテストがあるが、カンボジアから世界大会出場への道が開けるのはこの大会だけだ。最終選考では、出場者の熱のこもったプレゼンテーションが続いた。

 今回はこれまでの2倍近く、過去最多の111チームが応募した。テーマは「農業」「教育」「一般事業」「医療」「テクノロジー」の5つに分けられ、高校生を含む14チームが最終選考に残った。最終選考では、それぞれのチームが英語で約10分間のプレゼンテーションを行い、審査員とさらに10分近い質疑応答をした。

 その結果、1位になったのは大学生3人のチーム「SPARE(スペア)」による、空きスペースマッチング事業。3人ともプノンペン市内の大学に通う3年生だが、専攻は経営学、バンキング・ファイナンス、コンピューターサイエンスと異なる。各自の強みを生かし、市内の空きスペース保有者と、会議やイベントで一時的に場所を利用したい人たちとをインターネット上で結びつけるシステムの構築を提案した。

 このコンペは、単にアイデアにとどまらず、実際に町に出て調査を十分に行うことを課している。3人も200人以上のプノンペン市民に聞き取り調査をしており、約7割が「空き場所を探したことがある」、約3割が「使われていない部屋や建物を持っている」と答えたという。しかも調べてみると、空きスペースのオーナーは、多くがネットの利用に慣れていないお年寄りであることも分かった。知らない人に場所を貸すことへの不安もあった。そこでスペアは、まず大学やカフェなど、既存の施設を貸し手とするマッチングで実績をつくって事業そのものへの信頼度を高め、一般の貸し手を取り込んでいく戦略を立てている。

 スペアのブット・センさんは「自分たちが場所探しに困った実体験から発想した。調査をすればするほどニーズが高いことも分かり、1月には実際にビジネスをスタートさせた」と話す。建築ブームに沸くプノンペンでは、空きスペースは今後ますます増える可能性があり、スペアは「3年後には月間売り上げ2万ドルを目指している」という。

 ◆旺盛な起業家精神

 2位に選ばれたチーム「エコ・プラスチック」は、カンボジアでよく見かける傷んだ道路に目をつけた。近年は舗装道路が増えたが、穴があいたり割れていたりする個所もまだ多い。そこでプラスチックの廃材を補修材にすることを提案した。ごみの再利用で道路が補修されるという「一石二鳥」のアイデアが評価された。

 高校生のチーム「WeLocal」は3位に入賞。カンボジアの地方を訪ねる旅行者に家庭料理を提供するビジネスを提案した。旅行者には素朴な家庭の味を楽しんでもらえ、収入の少ない地方の家庭にとっては収入源となることがメリットだ。

 優勝者には賞金5000ドル(約54万円)、2位には3000ドル、3位には1000ドルが贈られるほか、1位と2位は3月にブータンで開かれるアジア地域のビジネスコンテスト「メコン・チャレンジ」に出場できる。

 この大会を立ち上げた早稲田大学研究推進部参与の大江建氏(シーセフ理事)は、カンボジアの若者たちの起業家精神について「他国に比べて非常に旺盛で、年々、質が高まっている。東南アジアのなかでも先進国とされるシンガポールやタイにはない勢いを感じる」と高く評価している。また、「今、自分たちの社会にある問題に対して答えを出そうという提案が多かった」と話す。

 カンボジアでは、カフェブームの先駆けになった「ブラウンコーヒー」、古民家の改築から始まったホテルグループ「フランジパニ」など、若者たちがアイデア勝負で起業し、流行を生み出した例も多い。今回入賞した若者たちが、カンボジア社会にどんなビジネストレンドを作っていくのか、楽しみだ。(カンボジア月刊邦字誌「プノン」編集長 木村文)