【高論卓説】大分、「味一ねぎ」使用禁止問題

 ■農協に排除命令「不公正な取引方法」該当

 公正取引委員会は、大分県農業協同組合(JAおおいた、大分市)に対し、2月23日に独占禁止法の規定に基づき排除措置命令を行った。「味一ねぎ」という地域ブランドの農作物に関するものである。

 命令の具体的な内容は、JAおおいたが独禁法19条(不公正な取引方法第4項「不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること」)の規定に違反する行為を行っているものであるとされている。

 事案の概要は次の通り。大分県中津市および宇佐市において小ネギの生産などの事業を行っている会社5人(JAおおいたの組合員であり、JAおおいたの味一ねぎ部会の会員でもあった。以下、5人)は、JAおおいたに全量出荷を行っていたが、採算の問題から個人出荷を行うようになった。これに対し、JAおおいたは、5人の部会からの除名処分を行い、「味一ねぎ」の銘柄で販売しないよう通知した。結局、5人はJAおおいたへの販売委託を取りやめざるを得なかった。

 これらのJAおおいたの行為に関して、公取委は、「農協(JAおおいた)は、組合員から小ネギの販売を受託する取引(以下、小ネギの販売受託)に関し、個人出荷を理由として味一ねぎ部会を除名された5人に対して行っている味一ねぎに係る販売事業などを利用させない行為を取りやめなければならない」などの排除措置命令を行った。

 ところで、JAおおいたは、「味一ねぎ」の商標権を取得している(商標第5725461号)。それゆえ、5人に「味一ねぎ」の商標を使用させるかどうかは、商標権者であるJAおおいたに委ねられているように思える。そこで、この商標の問題について考えてみたい。

 独占を実現する法律である知的財産法と独占を禁止する独禁法の関係について、独禁法21条では、「この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない」という調整規定をおいている。

 もっとも、「権利の行使と認められる行為」でなければならず、例えば外形上は権利の行使であったとしても、その行使が「不公正な取引方法」に該当するような場合には「権利の行使と認められる行為」にならず独禁法違反となる可能性がある。

 公取委では、JAおおいたに関する不公正な取引方法のガイドラインを用意しており、そこでは、「単位農協が部会に対し、同部会の会員が生産物を全量出荷しなければ、部会から除名するよう求め、単位農協に全量出荷させること」などが不公正な取引方法に該当する具体例として挙げられている。

 本件はこの具体例とは異なるものの、JAおおいたが5人に味一ねぎの商標を使用させなかった最大の理由は部会に所属する会員がJAおおいたに全量出荷を行わず個人出荷を行ったからという点にある。これはまさに「不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること」(不公正な取引方法)に該当するものといわざるを得ない。

 本件は、例えば、5人がそもそも会員ではないような事案とは事案を異にし、JAおおいたが5人に対し「味一ねぎ」の商標を使用させなかったのは、商標権の「権利の行使と認められる行為」とはいえないであろう。他方でJAおおいたとしても品質管理しなければならず、JAおおいただけが責められる話でもない。

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【プロフィル】溝田宗司

 みぞた・そうじ 弁護士・弁理士。阪大法科大学院修了。2002年日立製作所入社。知的財産部で知財業務全般に従事。11年に内田・鮫島法律事務所に入所し、数多くの知財訴訟を担当した。17年に溝田・関法律事務所を設立。知財関係のコラム・論文を多数執筆している。41歳。大阪府出身。