パキスタン、繊維復活の鍵握るデニム工場 差別化が奏功、生産量倍増

カラチにあるADMのデニム縫製工場で作業に当たる男性(ブルームバーグ)
カラチにあるADMのデニム縫製工場で作業に当たる男性(ブルームバーグ)【拡大】

 繊維産業の不振で輸出が伸び悩むパキスタンにおいて、商業・金融の中心地、カラチにある1つのデニム工場が輸出復興の鍵を握っているかもしれない。

 ◆輸出が伸び悩み

 多くの小売業者がより安く、タイムリーに生地を供給できる業者へと発注を移す中、パキスタンの製造メーカーは長年、停電や通貨高、無関心を決め込む政府に苦しんできた。その結果、ここ数年で何百もの工場が閉鎖し、50万人以上が失業した。そうした中で、アーティスティック・デニム・ミルズ(ADM)は生産量を倍増し、カラチに新工場を建設している。

 綿糸からジーンズまでをワンショップ方式で手掛けるADMは、スペインのインディテックス傘下のアパレルブランド「ザラ」や英国のファッションブランド「ネクスト」など小売業者に商品を供給している。紡績糸や生地を輸出するだけの企業が大半を占める中、ファイサル・アーメド最高経営責任者(CEO)は楽観的だ。同CEOはADMがおよそ25年前に衣料品作りに着手し、他社との差別化を図った際の決断が節目だったと言い、「以前ならトルコに向かっていた多くの注文を今は当社が受注できている」と話す。

 綿花生産量で世界トップ5に入るパキスタンは、5000年以上、綿花を栽培してきた。この国では綿から糸を紡いで生地にし、最終的に縫製を手掛ける他のアジア諸国へ出荷するのが一般的だ。

 パキスタン経済の屋台骨を数十年来担ってきた繊維産業が不振にあえぐ中で、ADMの好調さは業界にとってまたとない期待の証しとなっている。

 今年7月の総選挙を前に外貨準備高が減少し、政府は輸出復興と国際通貨基金(IMF)からの支援回避を迫られている状況にあって、輸出の半分以上を占める繊維産業は極めて重要だ。

 世界銀行のデータによると、2005~16年にパキスタンの輸出は27%増と、隣国のバングラデシュ(276%増)、ベトナム(445%増)に後れをとり、市場シェアを落としている。インドは東南アジアでバングラデシュに次ぐ2位の衣料品輸出国だ。とはいえパキスタンはバングラデシュ、ベトナムとは異なり利用可能な国産綿という強みがある。

 ◆税優遇には懐疑的

 ダガ商務長官は17年11月のインタビューで、同年2月に実施した輸出業者向けの優遇税制措置は、デニムなど付加価値品に最大のインセンティブを与え、3年来の輸出低迷からの脱却を目指したものだとし、17会計年度(17年7月~18年6月)の輸出急増を狙っていると話していた。

 ただ、この国の繊維会社は政府に助成金や奨励金を求めるロビー活動を頻繁に行ってきた。アバシ首相は今月のインタビューで、昨年は税優遇を実施したが、選挙前にこれ以上の措置を講じることはないだろうと牽制(けんせい)している。

 JSグローバル・キャピタルのアナリスト、アハメド・ラクハニ氏は「バングラデシュ、ベトナムの政府はわれわれと違って産業に多大な支援を行っている。税優遇は幸先の良い一歩ながら、電力料金の引き下げや賃上げ抑制が必要だ」と主張しつつも、パキスタンでこうしたインセンティブが全て導入されて世界的に張り合えるようにはならないとの見方を示した。

 繊維会社の経営陣の中には、自分たちがのんびりしすぎていて市場傾向に後れを取っているのに、政府から補助金を得ようとしてきたと認める者もいる。

 パキスタンの財閥系企業、MHGグループ・オブ・カンパニーズのマジド・アジズ社長は「パキスタンの輸出業者の約95%は自ら打って出て顧客を見つけるよりも相手が来るのを待つという精神構造だ。国際世界において、そうやってカネを稼ぐには、統合と規模の経済が必要だ」と語った。

 ADMは取引先として、まとまった注文よりも頻繁にデザインを変更するため小ロットの納品に高額を支払う米ロサンゼルスの一流ブランドを追求している。衣料品の生産能力を高めて売り上げを伸ばす同社は、18年6月年度の売上高80億ルピー(約76億6500万円)を達成するにはこのやり方が寄与すると語った。

 アーメドCEOは「繊維産業は苦境に陥っているものの、パキスタンのデニムは上昇傾向にあり、多大なチャンスがある」と自信を示した。(ブルームバーグ、Faseeh Mangi)