審美性だけでなく「美意識」を育てよ デザインの考え方で社会変革目指すリトアニア (2/3ページ)

ルータ・ヴァルサイティ氏
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 産業の世界で働く人たちも同じことに気がついてきた。同国にはプログラマーの人材も豊富だが、ただコードを書いていればビジネスが回るわけではないと思った人たちは、ビジネスやUXを設計するのにデザインの考え方が有用である、とデザイン書に手を伸ばすようになってきた。

 人口約320万人の同国は国外市場で稼いでいくしかない。その時、プログラムを書いているだけなら、ソ連時代の役割分担制(例えばリトアニアはTVを生産する担当であった、とか)の延長線上にいることになる。あらたな意味をつくっていかないといけない。こう考える人が増えてきた。

 このような人たちを相手に、ルータはデザインの考え方を伝え、相談にのっている。

 「90年代の独立の際、私たちは大混乱の最中にありました。一部の政治家や官僚はモスクワと汚職関係にあり、良い関係があったデンマークからのサポートを断ったのですよ。あらゆる資産は売却され、一番大きな石油企業はポーランドの手に渡りました。そのような破綻的な状況から、私たちはスタートせざるを得なかったのです」(ルータ)

 混乱の極みの際は国としての独立体制を作ることが最優先だった。その際、デザインの人間の発言は殆ど顧みられなかっただろうが、このまま社会的にさらに余裕ができてきた時に勘案すればいいとのプロセスを辿ると、後で取り返しのつかないことになる。このような危機感が強い。

「あらゆるアイデアに食いつくしかない」